やさしい日本語

[ グローバル人材2018 ] 外国人雇用とやさしい日本語 ⑴

こんにちは!

まだまだ暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?
早く暑さが落ち着くといいのですが…、みなさまもお気をつけてお過ごしくださいね!

さて、7月20日(金)に行われたグローバル人材2018
翻訳機や外国人雇用に関する展示会もありましたし、セミナーや講演会も行われていました。

私は以下の2つのセミナー・講演会に参加してきました。

  1. 「AI翻訳は「やさしい日本語」で使いこなす 外国人雇用は「やさしい日本語」で腹をくくれ 」
    やさしい日本語ツーリズム研究会
  2. 「外国人とつくる日本の未来〜産業、文化、社会変革、政策の視点から〜」
    外国人雇用協議会

まず❶のやさしい日本語ツーリズム研究会の内容から振り返って行きたいと思います。

AI翻訳は「やさしい日本語」で使いこなす 外国人雇用は「やさしい日本語」で腹をくくれ /やさしい日本語ツーリズム研究会

参加者層は、企業の採用担当者、AI翻訳に関心のある方、日本語教育関係者がいらっしゃっていたようです。

セミナーの内容は大きく2つに分けられます。

  1. やさしい日本語ツーリズム研究会の吉開章氏による
    やさしい日本語の必要性とAI翻訳でやさしい日本語が役立つ理由についてのお話
  2. 大阪外食産業協会の井上泰弘氏による
    外国人を雇用することについてや技能実習生の日本語の実態、日本語の解釈違いによるミスコミュニケーション、やさしい日本語の活用例などについてのお話

私がセミナーを聞いていて、印象に残っていることをいくつか書いてみたいと思います。

やさしい日本語の必要性とAI翻訳でやさしい日本語が役立つ理由

外国人=英語を話すって本当でしょうか?

こちらの動画は、セミナーでも拝見したのですが、やさしい日本語ツーリズム研究会が作成したもので、なぜやさしい日本語が注目されているのかがとてもわかりやすく表現されています。

もしよろしければぜひ一度ご覧ください。

在留外国人の数

現時点での数値はどうなのかな?と思ったので調べてみました。

H29年末時点での在留外国人の数は、256万1484人です。
(法務省入管局:平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)より)

去年より約18万人増えています

外国人観光客

日本政府観光局(JNTO)によると2018年6月時点での訪日外客数の累計(2018年1月〜6月まで)は15,898,900人です。

6月の訪日外客数だけでも前年比+15.3%となっており、外国人観光客が増えていることがわかります。

東京に住む私もここ1年ほどで身近な生活シーンで外国人を見かけることが増えたように感じます。

特に、コンビニや飲食店の従業員として外国人を雇用されているお店が本当に多くなったと思っています。

外国人観光客はどこから来ているのか

ビデオの中でも語られていますが、外国人観光客の約8割が東アジアから来ています。

日本政府観光局(JNTO)の2017年の統計を見ても、74.2%が東アジアから来日していることがわかります。韓国・中国・台湾・香港からの来日が多くを占めています。

英語より日本語ができる外国人はいるのか

ここからは岩田先生の論文を参照してみたので、そのことについて書いてみます。

 

国立国語研究所が行った「生活者のための日本語:全国調査」の結果によると、日本に住む外国人住民中、英語ができる人は44%日本語ができる62.6%を下回ることがわかった。中国語ができる人は38.3%である。

『言語サービスにおける英語志向 ー「生活のための日本語:全国調査」結果と広島の事例からー』岩田和也(広島市立大学) より抜粋

 

日本語(62.6%)です。

日本語ができる人が多いことがわかります。

下の表は地域別の英語ができる人の割合と日本語ができる人の割合についてまとめたものです。

都道府県 英語% 日本語%
広島 36.8 70.8
静岡 30.4 47.4
新潟 32.8 69.4
愛知 16.4 69.0
京都 56.1 65.3
千葉 53.2 80.0
大阪 39.8 68.8
長野 34.1 59.3
富山 46.0 47.1
山形 44.2 70.1
全国 44.0 62.6

『言語サービスにおける英語志向 ー「生活のための日本語:全国調査」結果と広島の事例からー』岩田和也(広島市立大学) 表2 地域別「◯◯語ができる人」英語:日本語 より英語と日本語の数値を抜粋

愛知県は日系ブラジル人が多く住む地域なだけあって、特に英語の数値が低いことがとても印象的です。

地域的にやや偏りはあるものの、日本で暮らしている外国人のみなさんには日本語の方が通じる可能性が高いということが言えるのではないでしょうか。

この表からみても外国人とのコミュニケーションは、必ずしも英語じゃなくても大丈夫だと言えそうですね。

みなさんもやさしい日本語を使ってみませんか?

 

<検定合格率50%>「NAFL日本語教師養成プログラム」

ローマ字表記の罠

googleで「韓国語 ハンバーガー」と調べてみてください。

韓国語の音を聞いてみるとわかりますが、「ヘンボーゴー」って聞こえるんですね。

でも、意味はハンバーガーなんです。

ヘンボーゴーという音を聞いた時、私たち日本人は「ハンバーガー」と結びつけることはできるでしょうか?

おそらく韓国語を知らない人はできないと思います。
私も全然わかりませんでした。

何が言いたいのかというと、英語がわかる人なら、カタカナの外来語ならわかるんじゃないかな?という思い込みは誤りであるということです。

また、ハンバーガーとカタカナで書いたところで、外国人はこれが何を意味するのかきっとわからないと思うのです。

これは実際に英語圏の学習者に日本語を教えていても感じていることです。
クライアントと恐竜の話をしている時に「トリケラトプス」と私が言いました。
でも、クライアントにはさっぱり伝わりませんでした。
こういうことなんです。

また、日本語の上にローマ字で書けば読めるでしょというのも誤解です。

世界の言語は非常に多様です。
日本語にある音が他の言語ではないものもあるでしょう。
逆に日本語にはないけれど外国語にはある音があります。

そのため、日本語にはあって相手の母語に同じ音がない場合は似たような音で再現しようとします。

吉開氏の話の中に出てきたのですが、

皆さんは「chi」はなんと読みますか?
私たち日本人はこのローマ字表記を「ち」と読んでいますよね?
ですが、「ち」という音がない言語もあります。

「ち」という音がない言語の外国人はchiを「し」として読んでしまうこともあるのです。
中学校をローマ字で書くと、chugakkouです。
この場合、シューガッコウって読んでしまうわけです。
これでは口頭で日本人に言ったとしても伝えることができません。

それから、「sha」も同じです。
日本人はこのローマ字表記を「しゃ」と読んでいます。
タイでは「しゃ」の音がありません、代わりに「ちゃ」を用いて言ってしまうことが多いのです。

このことからもローマ字表記をすることで共通の理解を得やすくなるのかというとそうでもなさそうだということがわかるのではないでしょうか?

音声でのコミュニケーションでは、外国人が読んだ音を日本人が正しく聞き取ることは難しいのではないかなと予想されます。

アメリカでお土産を買った日本人に「謝々」とお礼をいうこと

 

Tomoko
Tomoko
Hello! I want to buy these postcards!
shop staff
shop staff
OK! Here you are.  謝々!!

この会話を皆さんはどう思いますか?

私も海外旅行に行くとたま〜にあります。
中国語で話しかけられたり、中国語でありがとうって言われたりすることがあります。

このような時、みなさんはどう感じますか?

やっぱりどこかで”外見で”判断されたのだなと思いませんか?
私を見た店員さんはアジア人だと判断し、アジア人といえば、中国人だ。
ならば、中国語で挨拶をすれば喜んでくれるかもしれない。

店員さんに悪気はないと思いますが、言われた側はどうでしょうか?

あまり気持ちがいいことではありませんよね。

せめて、Thank you!って英語で言われたいと思いませんか?(英語で話しかけたので)

こういう思いを日本で暮らしている、あるいは、日本に観光に来た外国人もしているかもしれないですよね。

私たちの母国語である日本語でコミュニケーションをするということはこのようなミスコミュニケーションを防ぐ効果もあるのではないかなと感じます。

みなさんは、何語でコミュニケーションをしますか?

やさしい日本語の3つのコツ

やさしい日本語には3つのコツがあるとお話がありました。

それは、「は・さ・み」という頭文字を使って表されます。

っきりいう
最後(いご)までいう
例)これは・・・ちょっと・・・・
→これは使うことができません。
にする。
短(じか)い文でいう

コツは「、」までを1つの文にするようにすると短くできますよ。
例)次の角を右に曲がります。まっすぐ行きます。3つめの角を左に曲がります。
のように短くするといいですね!

やさしい日本語に興味のある方はぜひここから取り入れてみてください!

うなぎ文とこんにゃく文

吉開氏がここからAI翻訳のことに触れていきました。

日本語は自動翻訳に向いていない言語であると言われています。
それは、うなぎ文やこんにゃく文のような自動翻訳しにくいものが日本語には多く存在するからです。

みなさんはうなぎ文こんにゃく文ってご存知ですか?
ご存知ない方は下のサイトもご覧になってみてくださいね!

ランチを注文するときに、「私、Aセット。」
こんな風に言いませんか?これをうなぎ文といいます。

私=Aセットではありませんよね。私はAセットを注文しますという意味を表しているのですが、このままGoogle翻訳などの自動翻訳を使って英語に訳してみると,
I’m A-set.のように訳されてしまいます。

そういう意味じゃないよ!って突っ込みたくなると思いますが、
自動翻訳に日本語が向いていない理由の一つがこのうなぎ文が日本語にはあるからなんです。

それから、こんにゃく文というのは、「こんにゃくは太らない」のような文をさします。
私たち日本人は、この文を読んでもあまり違和感はないかもしれません。

こんにゃくは(食べても)太らない(食品です

という()の部分が省略されているわけです。
こんにゃくは太らないという文字だけだと、こんにゃくが擬人化してスリムな状態でいるような…そんなイメージを想像できなくもありませんよね。

このようなうなぎ文こんにゃく文を自動翻訳するとき、おかしな外国語に訳されてしまうということを指摘されていました。

では、訳した外国語と訳す前の日本語の差を埋めるためにどうしたらいいかというと…、
やさしい日本語を使うことでより精度の高い翻訳ができるとお話しされていました。

実は私自身もやさしい日本語を使った方がより正確に訳せるということをレッスンのたびに感じています。
私のクライアントは英語圏の方が多いです。
そのため、作ったテキストの日本語を英語に訳しどう英語で説明すればいいか確認しているのですが、その際やさしい日本語で翻訳させることが多いんです。

何も考えず思いついた日本語を翻訳させると「私が伝えたいことと違うみたい」ということがよく起こります。

上記のやさしい日本語のコツを意識的に使うと、「うん、この方が私も伝えやすくなったな」と感じることが多いです。

やさしい日本語のコツである、「みじかく、はっきり、最後まで話す」ということは、
将来AI翻訳機を通して外国人とコミュニケーションするときに私たちに求められる話し方になるのかもしれませんね!

 

長くなって来ましたので、次に続きます。

次の記事で井上氏の講演について書いて行きたいと思います!