やさしい日本語

「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」に関する有識者会議(第一回) 議事概要を読んでみた

こんばんは。

やさしい日本語アドバイザーのTomokoです。

今日は「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」に関する有識者会議(第1回)議事概要を読んでとても参考になったので、頭の中を整理するためにブログに書くことにしました。

夫に「そんなん読むやつおんねんなぁ・・」ってツッコミが入りましたが、
私は「え?こんなおもしそうな資料読まないわけないでしょ?ルンルンで鼻歌交じりに読んだよ」と反論しておきました。

各界のスペシャリストたちがやさしい日本語について討論した資料なんですよ?

興味がわかないはずがありません。

コロナウイルスに伴い自宅から一歩も出ない日々のせいか、
非力な自分に対し、何もできない人間なんだ・・・と若干鬱っぽくなる日もあったんですが、

久しぶりに

おおお!!!!
「やさしい日本語」の情報だーーー!
わーーー!すごい!楽しい!面白い!

と思えたので、まだ大丈夫そうだなと思いました。笑

かなり、単純なんです。

前フリが長くなりましたが、どんなことが書いてあるか私なりにまとめてみます。

書き言葉のやさしい日本語のガイドラインを作ろう

法務省で有識者会議を開いて取り組んでいるのは、「書き言葉」に関するやさしい日本語のガイドラインを作ることです。

在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインに関する有識者会議

概要にも書いてありますが、

出入国在留管理庁は,国や地方公共団体が外国人向けに情報発信を行う際には,多言語化と併せ,やさしい日本語を用いることが重要と考えています。本会議は,国や地方公共団体におけるやさしい日本語の活用を促進するため,「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を策定することを目的として設置しました。

もっとやさしい日本語を国や地方公共団体にも使ってもらいたいから、

どうすれば書き言葉がやさしい日本語になるか、これを見たら書き換えるヒントがいっぱいですよ!

という資料(ガイドライン)を作ることになったということのようです。

話し言葉ではなくて、書き言葉のガイドラインということです。

書き言葉のやさしい日本語はどんなものがあるか

「文字」として読むものは全て書き言葉です。

例えば、行政から発行される文書。

特別定額給付金の申請書

予防接種の申し込み用紙

赤ちゃんの1歳半検診のお知らせ

児童手当の申し込み書類

保育園申し込みのための書類

保育園からの給食だより

給食の献立

アレルギー発症時の対応に関する書類

病院の予約票・問診票

手術時の同意書

薬局でもらう薬剤情報

学校からのお知らせ

PTAや学童からのお知らせ

入塾する時に読む塾の定款

食品に書かれている原材料名や注意書き

休校中に学校から届くメール

学校のHPからダウンロードした子供にさせて欲しい家庭学習の時間割と指示

あとは、みなさんが今読んでいるHPなどのインターネット上にある文字も書き言葉です。

コロナウイルス のことを知りたくて開く役所のHP

助成金について知りたくて開く経産省のHP

10万円について知りたくて開く総務省のHP

私の身近で見てきた書き言葉が書かれている媒体を挙げてみましたが、
普段から私たちの身近には本当にたくさんの書き言葉と接しています。

議事概要の中では、

  対象とする内容としては、外国人へのお知らせ全般、広報文書などを考えている。

と書き言葉の対象について言及されています。

行政が発信する情報量に日本人と外国人とであまり差があってはいけないと思っています(ビザ関連はどうしても差異になってしまうと思いますが)。

今現在の文書の日本語のままでは難しいので、情報量に対し外国人が受け取ることができる情報は日本人に比べ少ないです。

やさしい日本語を活用し(もちろん多言語対応もする前提で)外国人が情報を受け取れる情報量を増やすことは大変有意義だと思っています。

書き言葉は、非常に膨大で広範囲に関係するものなので、
良い意味でこのガイドラインができることで広く良い変化が起こっていくといいなと思っています。

書き言葉の日本語の難しさはどこにあるのか

この点についても議事概要の中で、指摘されています。

私は議事概要を読みながら、ここは庵先生の言葉なんだろうな〜とか、ここは岩田先生だな〜とか、ここは生野区長さんかな〜とか妄想しながら読んでいました。(すみません、妄想が止まりません)

それは置いておいて、

行政文書の難しさについて以下のように言及されていました。(まとめます)

  1. 時候の挨拶や敬語が多すぎること
  2. 専門用語や法律的な用語があること
  3. 責任問題が発生する懸念から語尾を曖昧にしてしまうこと

きっとみなさん、「ウンウン」と頷いたのではないでしょうか。

専門用語

学校

私個人の経験では行政に限らず小学校中学校で子供達が触れる言葉の中にも山のように専門用語があります。

ちょうど今日「足し算」「引き算」という言葉が出てくる文章を中級レベルのクライアントと一緒に読んでいたのですが、「全然わかりません(泣)」と難しくて意気消沈していました。

文章に使用されている文法のレベルや文の長さはは初中級くらいのものを選んでいるのですが、それでも文章に使われている言葉がガラッと変わると途端に難しく感じてしまうのだなと改めて実感しました。

私もいつぞや英語を勉強していた時に、「アメリカの小学校で学ぶ英語」というような本を開いた時に、「小学校でしょ?楽勝なのでは?」と思って取り組んで私のクライアントみたいに泣きを見ました。

当時の私は足し算という言葉も引き算も掛け算も割り算も、算数で使われる文法も全然知利ませんでした。
・・・言葉がわからないだけで小学生にもなれないのかと愕然としました。

法律用語

あとは、弁護士の友人にメールで相談していた時に、

「態様次第かな〜」という言葉が帰ってきました。

私は、「たいよう・・・・状態・様子の略語かな?」と思ったので、「状況次第ってこと?」と返事をしました。

友人は「そうそう〜」と答えてやっと意味を理解した私ですが、
見慣れない言葉を見るとやっぱり少し戸惑うというか、合ってるかな?と思いますよね。

法律で使われる言葉は外国人にとってはとても難しい言葉の一つだと思います。

当然日本人にとっても難しい言葉のオンパレードですので、司法の世界にもやさしい日本語が入り込めたらいいのだけどな〜と思っています。

医療用語

やさしいコミュニケーション協会の活動の一つに、
色々な医療系の学会に参加してみるという活動をしていた時期があるのですが、

そこで「交通する」という新しい動詞を目にしました。

交通って動詞になったりすることもあるんや!!!と感動したのを覚えています。

その時の文脈からは、通る、交差するという意味で使われていたのですが、「面白い」と思うと同時に難しいなぁと思いました。

みなさんは、交通するっていう動詞に出会ったことがありますか?
私はその時35歳だったのですが、35年ほど出会ったことはありませんでした。

 

知らず知らずに使っていることが多い専門用語は、
専門用語で使っていることを認識し、「意識」して置き換える努力が必要になると私は思います。

やさしい日本語のガイドラインもぜひ日本語教育の専門用語をできるだけ使わずに、
事例を多くあげ、多くの人が読んで簡単に理解でき、このガイドラインをもとに
やさしい日本語を実践し、外国人住民に伝わった!という結果が感じられるようなものになればいいなぁと思います(自戒を込めています)。

結局何が言いたいの問題

語尾が曖昧なことについては、
新コロナウイルスの感染対策の一つに「3密」で使用されていた文も、この部類に入ると思います。

当初は「3密を避けて外出しましょう!」という文章でしたね。

私はこれを読んだ時に「外出していいの?むしろ推奨してる・・の?外出しちゃうよ・・・?」と思いました。
(日本語教師的感覚かもしれませんが)

そして、この3密、やさしい日本語にもしずらかったです。

それは、単純なところでは、矛盾を強く感じていたことからです。

外出しましょう!という動詞があって、
3つのシチュエーションは避けた上でと書いてある。

これはつまり、行くなっていうことなのではないか?と頭が理解しちゃうんですね。

それと、要請という言葉は、それを私たちに指示をしたり行動を強いていないからです。

「〜ないでください」という禁止を表す文章で伝えないと、きっと外国人には伝えたいことが伝わらない・・・・
だけど、要請という言葉は、自宅にいることを強いるものではないということで、私は協会としてやさしい日本語にして公表することを断念しました。

私が日本語教師で、学生たちに説明する場合は、私見として「〜ないでください」を使って説明したと思いますが、協会という立場でそれをすることに勇気が持てませんでした。

 

あとは、マスクの買占めについても「必要以上に買わないで!」とは決して書かないんですよね。

このチラシの中で一番重要そうな文はこの文章です。

「風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要です」

と書いているわけです。

おそらくですよ、これを読んだ外国人は「そうですよね、重要ですよね〜」と理解するでしょう。マスクの買占めしないで!って書いていませんから。

厚労省も多くの人にとって無難な伝え方で書きたいと思うでしょう。
そのお気持ちはよくわかります。

だけど、この文章では、空気を読まないと「必要以上に買わないで!」というメッセージは届きにくいと私は感じます。

東京都の通訳ボランティアの講演会で岩田先生が、日本人はもっと「短くて、強い」文章に慣れた方がいいかもというニュアンスのお話をしてくださいました。

岩田先生が例示してくださった動物園の警告文には「危ない。かみます。」と短くシンプルに書いてありました。
それを画面で見せてくれた時、それを見て観衆から笑いが起こったんです。

短くてはっきりした文章に慣れていないから、おもしろく感じるのではないかと。

  • はっきりしている文章
  • 短い文章
  • シンプルに伝えている文章

これらを幼稚だと感じているところがあるのかもしれないと、そのようなことをお話ししてくださいました。(確かに幼稚の対極にありそうな敬語は何かと長いですよね)

幼稚ではなく、わかりやすくて、易しい文章だ。
そういう意識改革が必要なのだろうなとこの文を読みながら考えたのでした。

 

4000字を超えたので、ページを分けますね。

ここまでお読みくださりありがとうございました。